[食]わけありりんご

newmoonakiko2008-11-12

青森県板柳町には「りんごまるかじり条例」がある。斜陽といわれる「りんご」で町おこしをした珍しい町だ。舘岡一郎町長は、職員時代にこのプロジェクトを率いたリーダーである。農薬を極力減らし、まるかじりできるりんごを栽培しようというのは、画期的なことだったと思う。農薬なしにりんご栽培をするということ自体が、農家には想定外なのだ。ことに大産地といわれるところほど、この意識が強い。

しかし、「町にあるものをとことん生かすしかない」と地域振興の中心に「りんご」を据えたのが1982年。ジュースなどりんご加工品の開発と販売を行う財団法人板柳町産業振興公社りんごワーク研究所が88年にオープン。試行錯誤の末に完熟無添加りんごジュースが完成し、まったく無から販路を広げていったという。

この町の生産者、福士忍顕さんに初めて会ったのは、8年ほど前になるが、「りんごまるかじり条例」があることを知ったのは、つい最近のことだ。福士さんは、有機農業研究会を興し、青森県の特別栽培よりもはるかに少ない農薬しか使わない技術を確立している。行政主導の町おこしが、25年以上たって、ようやく花開いたということだろう。

今年は、2回ほど雹の被害をうけたそうで、残念ながら、りんごの表面に傷がついて、一般市場での取引きはできないものになってしまった。そのりんごを「わけありりんご」として、低価格で販売したところ、これが大人気に。値段の安さも魅力だが、そのおいしさも評判になっている。福士さんは、うれしさの反面「雹の被害を受けなかったりんごもあるんだけど。こっちも食べて欲しいな」と言っている。それは確かにそうだ。

しかし、わけありりんごのお陰で、板柳町のりんごのおいしさは、昨年よりも倍以上の人の知るところになった。りんごが、自分で宣伝してくれているというわけですね。こうなれば、本物だ。