999円のダウンコートの向こう側

寒い!こんなに寒いとコートを着ているのにもう1枚コートを着たくなる。そんな時、市場を歩いていたら、999円のダウンコートが目に入った。999円、1はどうした?

去年の「文芸春秋」に経済学者の浜矩子さんが、「ユニクロ」批判を書いて物議を起こしたが、経済学者じゃなくっても、880円のジーンズを買いながら、どうしてと考えない主婦は少ないのではないかと思う。それは、農産物が安くなるならどんどん海外から輸入すればいいという男性が多いのと少し違う。家計を考えれば、安くなるのはうれしい。でも、日本でも作れるのにどうして中国産の野菜を食べなくちゃいけないのという素朴な疑問が沸いたのと同じだ。

その説明は、賃金の格差のある後進国が豊かになるために先進国が仕事を作ってあげているのだと。今思えばこれはペテンだった。繊維製品の輸出国の半分は中国であり、今は更に安い人件費でまかなえるベトナムバングラデシュに移っているという。一方、輸入国の8割を占めるのは、欧米や日本だ。繊維製品の消費の格差差は明白。他国の人々の洋服を安い賃金で作っているのは、農村からの出稼ぎの女性たちである。彼女らの貧困は一向に解消しない。しかも、問題は彼女たちの労働環境の劣悪さだという。ホルムアルデヒドなど化学物質の残留はユニクロ商品でも問題になったが、消費者よりもまず犠牲になるのは労働者だ。

天然繊維の綿の原料である綿花の農薬使用量は世界の農薬使用量の4分の1が使われている。綿花の生産地帯では、ガンなどの発生が急増しているという。ちなみに貴重なオーガニックコットンは、すでに欧米のブランド会社に買い占められていると友人が話している。

999円のダウンコート,880円のジーンズの向こう側を考えると、とても気分が悪くなる。