東京新聞を愛読しているが、朝日新聞の文芸・批評は歴史あるだけあって捨てがたい。たまたま読んだ4月9日は、「日常の亀裂 言葉に紡ぐ 芝不器男俳句新人賞に曾根毅」、「思想の地層 時代認識 枠組みが古くないか 小熊英二」、「将棋電王戦第3局観戦記 作家・貴志祐介」「55歳太く短く生きた 坂東眞砂子をしのぶ会」、「古典探遊 映画嘆きの天使×画家・安野光雅」、それに「あるきだす言葉たち 花吹雪 関根空」だ。

芝不器男俳句新人賞は、4年に1度選ばれる新人の登竜門で、100句作らなくてはならない。年齢制限があって、40歳未満だ。今回の応募総数は99作品というから、そんなに多くはない。震災以降を若い作家が「いかに俳句で引き受けるか」が着目されたという。

薄明とセシウムを負い露草よ
桐一葉ここにもマイクロシーベルト
燃え残るプルト二ウムと傘の骨

「日常に入った亀裂を危機感として現実化した」と評価された一方、「状況の説明でしかない」との反対意見も出たが、
最終的に「原発事故の収束は膨大な時間がかかり、セシウムマイクロシーベルトプルト二ウムも、もはや一過性の言葉ではない」という意見が決め手となって2011年千葉県柏市に住み、仙台港津波を体験した曾根さんの受賞が決まった。

こうした新人賞については、話題性というのも大きな要素になるだろう。4年に1回であるから4年間の世相が俳句に大きな影響を与えるのは当然である。俳句は、自然を対象に詠み、季語を入れるという伝統的縛りがある。原発事故は人事を対象に切りとる川柳に向き、実際たくさんの川柳が創られている。俳句の現在がどうようなものであるか知らないが、この複雑な深層を17文字で詠嘆できるにはそれ相当の覚悟がいると思われる。

わが国の首相は、わけがわからない17文字にしてさすがに自ら苦笑いしていた。
給料の上がりし春は八重桜