「鶏小屋に突っ込んだと思ったら竜飛集落だった」
太宰治が『津軽』で、こう描いた集落は、津軽半島の最北端、竜飛岬・青森県東津軽郡外ヶ浜町三厩龍浜にある。


「ここは本州の袋小路だ。読者も銘肌せよ。諸君が北に向かって歩いているとき、その路をどこまでも、さかのぼり、さかのぼり行けば、必ずこの外ヶ浜街道に至り、路がいよいよ狭くなり、さらにさかのぼれば、すぽりとこの鶏小屋に似た不思議な世界に落ち込み、そこに於いて諸君の路は全く尽きるのである」

太宰は、3週間かけて津軽半島を旅したそうだが、日本海を左に見ながら、山を上った先にすとんと落ちる岬がある。それは今も鶏小屋に似た不思議な世界に落ち込む。鶏小屋に似た不思議な世界ーこの意味するとことは実際に行ってみたところでよくわかならい。

ただ、そこに於いて諸君の路は全く尽きるのであるは、その通りなのだ。差し迫る山とひらける海の間の狭隘道路,袋小路にいやがおうでも行き着く。太宰が予言していたのか、日本の運命なのか。わからない。