[暮らし]父の着物・男の着物

newmoonakiko2006-02-24

京都の地下鉄改札口付近にイノダコーヒ店がある。京都でも由緒ある喫茶店だ。仕事仲間と落ち合う約束より少し早めに着いた私は、迷いもせずここに入った。朝早いのに店内は賑わってはいたが、運よく座ることができた。左隣は、旅の中年女性。右隣は、同じ「たび」でも「足袋」を履いた中年男性。なんとも微妙な色合いの鼠色のその「足袋」に私の目は釘つけになってしまった。どんな着物を着てるんだろう?茶の紬のようだぞ。本を読んでいるみたいだけれど、何の本だろう?職業は何かな?どんな人と待ち合わせしてるんだろう?
私も着物を着ていたら、「いい色の足袋ですね」って声をかけるのになぁ。(ここ30年着物なんてきてないのに)などど、まことに中年のおばさんの考えることは恐ろしい。
今、着物が再び脚光を浴びている。私の父も母も明治の終わりに生まれた。母はその人生の大半を着物で暮らし、父も家にいる時は着物で過ごした。母の着物も、なぜか父の着物も私が譲り受け、今箪笥の肥やしになっている。ことに父の着物は、母の染めの着物とちがって、縞や絣の織りの魅力、紡ぐことによって醸し出される陰影のある色あい。捨てがたいのだ。
と思っているところに私の大好きなアートスペース繭から、「美しい日本の古布」という案内が届いた。日本人の美意識そのものの布を現代の大人の女の服に見事によみがえらせてくれる楠本陽子さんの作品展。なにがなんでも行かなくては。

http://www.artspace-mayu.com