[教育]哲学者・今道友信先生のお話を聞く

newmoonakiko2006-04-23

東京大学名誉教授の今道友信先生は、1922年生まれ。日本が誇る最高の知性といわれている哲学者だ。その先生の講義「わが哲学を語るⅠ」が、鎌倉高徳院(大仏様のあるところ)を会場に開かれた。カント、ニーチェ孔子・・昔々かじったことがあったけ。「難しいお話はいいとして、先生のオーラに接してきなさい」という有難い先輩のお言葉に素直に従い、お話をうかがった。サブタイトルは、「詩についてー照応の諸相ー」である。古今東西の詩を引きながら、ことばとことば、詩と人間、過去の自分と現在の自分が、照応する関係を実に分かりやすくお話して下さった。
雑談の中で、人々は知の洪水の中で溺れている。何に価値を置くか、それを示すのが知識人の役割だとしたら、知識層の責任は重いのではないか。また、19世紀末までの戦死者は160万人にすぎないのに20世紀の戦死者は1億数万人。人口が増えたとしても、その残虐性において、まさに戦争の世紀。いくら科学が進歩したといっても、人間として進化したといえるか。進行役の早稲田大学教授の「情報化社会で世の中が進んでいく・・」という発言にたいして、今道先生が現代の知識人を徹底して批判されていた。大衆と知識人なんて言葉、久しぶりに聞いた。
「これからの希望は、美について分かる人が増えてきたこと。自分だけではなく、人を美しくしてあげたいという若者はすばらしい」と。加えて、「歴代天皇の名や年号の暗記より、1篇の詩を暗誦するほうが、人生を豊かにするのではないか」とも。青春と詩。昔、暗誦した詩を思い出し、もう1度、学びたくなった。