常識を変える

newmoonakiko2006-07-10

10年ぶりの札幌駅の変貌ぶりにはびっくりした。ことにJR駅ビルは壮観。人の流れは駅に一直線だ。東京駅にいるのかと錯覚する。これを発展というのか。北海道の人口の三分の一が集中する札幌。そのひずみもたくさんあるに違いないが、そんなことは日本の大都市はみな同じだから、どうってことないか。
今回の取材の目的は、札幌市が昨年から取り組んでいる生ごみリサイクルだ。家庭から出るごみの3割をしめる生ごみをどうリサイクルするか、これがなかなか大都市では手がつかない。一方、焼却炉の耐用年数、埋立地の残余年数もまったなしに迫っている。行政は緊縮財政のため、ごみ行政まで人員が確保できない。188万人の生ごみを回収したい肥にすることは不可能だと判断した札幌市は、「家庭でリサイクルできるのは生ごみだけだから、家庭で土に戻して」という方針に転換したようだ。生ごみを家庭で土に返す方法を市民から募り補助金を出すと。これにNPO法人北海道EM普及協会が、EMボカシを使った生ごみリサイクルを提案し、生ごみリサイクルスタートセットの密閉バケツとボカシを市民は500円で買えることになった。もっとも、密閉バケツとボカシに補助金をつける市町村は、結構な数でそう珍しい話ではない。札幌市の特色は、この生ごみリサイクルの拠点を市内の福祉作業所が担うというもので、たぶん全国でも初めての試みではないかと思う。ボカシは市内の2つの授産施設が製造し、その販売は5つの福祉作業所が担当する。市民が払う500円は、すべて福祉作業所の利益となる。生ごみリサイクルや土づくりの方法はNPOが担当し、10人程度の人が集まれば、どこにでも行って講習会を行う。自立支援法の改正により、福祉作業所は事業所と名を変えて、補助金を頼りとせず自ら事業を起こさなくてはならないという側面もある。が、見方を変えれば、生ごみリサイクルを通して障害をもっている人とそうでない人とが互いに役割分担しながら共に生きる社会を作れるのではないかとも思う。実際、福祉作業所を遠巻きに見ていた地域の住民が福祉作業所にボカシを買いに、生ごみリサイクルの方法を尋ねてくる。まさにノーマライゼイションではないか。
「ここまでくるのに10年もかかった」という。しかし、その間、生ごみの堆肥化や土づくりの方法を積み上げてきたのだ。いよいよ、生ごみを捨てて焼却する常識を生ごみを土に返し生かす文化へ変える時期がきたのだと思う。それに札幌市の生ごみリサイクルは、市民が環境に貢献するだけではなく福祉をも支援することができる。一歩進んだ札幌市民の誕生だね。