[俳句]秋深き
日中の暖かさが嘘のように日暮れは寒い。コンビ二で、肉まんを買って、食べながら歩く。月は高く、冴え冴えとしている。今日は、十三夜か。卑近な例だが、看板をつけるとき、なるべく目線から下につけた方がいい、とアドバイスを貰ったことがある。そうか、人は特別な時以外に空を見ない。ことに思い煩うことの多いこの時代、人は下を向いて歩いていく。わからぬでもない。
しかし、八方塞り絶対絶命の時、人は天を仰ぐ。太陽の光を頂き、太陽の光より淡く、月は輝いて空にある。明るいとは、月の光を言うという。月の光は心の内を照らし、荒ぶれた心を静める。月と道行の人生。悪くないではないか。
月を割る鋭き鉈をもてあます
という怒りの心境にも、月はつきあい
月心天影たくましく現れり
というふてぶてしさにも、月は語らず
十三夜耳あてて聞く夫(つま)の声
という甘い感傷をかわす。
ところで、8歳のSちゃんの月の句、
まるまってうさぎがねている月のなか
夜の月たぬきがわたしにあいにきた
8歳に戻れない。8歳にかなわない。