[暮らし]二十歳

newmoonakiko2007-01-08

10代のための合唱曲「白いうた 青いうた」。作曲家新実徳英が旋律を書き、詩人谷川雁がそれに詞をつけた。普通、歌は作詞ができて、それに曲がつくのである。作曲のセオリーに反しているが、考えてみると、生まれたメロディが言葉を獲得する。この作業の方が自然かもしれない。
谷川雁は、熊本県水俣市生まれの思想家、組合運動家でもあった。戦後のアジテーターとしてつとに有名だが、私にとっては、あくまで詩人の谷川雁だ。左翼変節といわれた後の人生はあまり知らなかったのだが、この合唱曲を聴いた時にやはり詩人・谷川雁はすごいと思わざるを得なかった。テープで谷川の元に曲が届けられたのか?新実先生によれば、電話口でハミングすることもあったという。谷川は、「三世代リレーからの贈り物」の中で、「あなたのお父さんがまず曲をつくり、なんとそのおじいさんが詞をつけ、十代のあなたがそれを歌うということになったら、おうちの空気はどうなります。盆栽までにやにやし、冷蔵庫がかたこと踊りだしはしませんか。」と書いている。本当は100曲を目指していたというが、谷川雁が肺がんで亡くなったために53曲で中断。関係ないけれど、C.W.二コルは、谷川の勧めで黒姫山に永住することを決めたという。知らなかった。
昨年結成したコーラスグループでも、この合唱曲の中の「二十歳」を選び、10歳の子どもから70歳まで、3世代の愛唱歌になっている。

「二十歳」

まぼろしの 噴水に ぬれたひとところ 胸のあたり
うらぶれた 四月の 昼のいしだたみ 影とあるく
子犬を笑え なんにもないはたち パン屋の匂いから逃げてきたおれw
鳶いろの ひとみは そらの青うつす 風も砂も

「二十歳」が遠くなるとこの「二十歳」の心模様が手にとるようにわかる。

ついでに俳句ではつくれない、詩。

「壁きえた」

にしと ひがし そらを つなぎ
よるの みやこ かべは きえた

どよめく とおり  ぼだいじゅ ゆれる
グーテナーベント! ローザ!
いきて あえた

もえろ まわれ ひとの まつり
もえろ かわれ ひとのれきし  (「新実徳英谷川雁による21世紀の叙情歌 白いうた 青いうた」より)

言うまでもなく、東西ドイツの壁が消えた詩だ。