[花]春を告げる

newmoonakiko2009-01-03

今日もよい天気だ。板橋の坂の上から眺めると、相模湾が湖のように見える。真正面に大島、右手には、真鶴半島。手が届きそうな箱根連山。香林寺に下るあたりは、立原正秋の「舞の家」の舞台だ。この小説の舞台は、小田原と経堂で、住んでいる町と生まれた町。私にはどうも縁があるらしい。小説の中身は、能楽室町流の宗家をめぐる愛憎の物語で、私とはまったく関係ないが。立原正秋は、小説を書くにあたって、その舞台を綿密に調べ上げたという。板橋と経堂の表どうりから裏道まで、歩く作者の姿が彷彿とする。

そういえば、瀬戸内晴美(寂聴)の「花冷え」は、小田原天守閣が舞台だった。満開の桜の下での別れは印象的だったが、今のほうがより近しい気分で思いおこせる。主人公の愛のはじめも終わりも小田原だった。瀬戸内さんも、小田原城の石段を登ったのだろうか?

さて、私の秘密基地に咲いた春告げる花、水仙。手折ってみると、水が滴る。しばらく雨が降らないのでパサパサしている土にも、こんなに水があるのかと思えるほどだ。水の花水仙。日に顔をむける蕾が、なんともけなげだ。

水仙や海飲み込みて春を告ぐ