二宮尊徳が蘇る

「国際二宮尊徳思想学会」。第1回のシンポジウムと創立大会が北京大学で開催され、 第2回学術大会が東京青山の日本青年館で、第3回は、昨年の八月に大連の民族学院大学で開催されたという。なぜ、中国で二宮尊徳なのか。その話を昨日報徳会館の草山昭館長に聞く。

中国では、賄賂が横行する少数の上流社会と経済的に立ち遅れた農村地帯の格差は、想像以上のものがあるらしい。中国政府も危機感を感じて農耕の奨励と農村の再建を重点政策に揚げているが、そこで注目したのが日本の江戸末期に農村の建て直しに力を注いだ二宮尊徳だ。わが故郷の金次郎さん!

報徳の思想の3基本は「勤労、分度、推譲」で、勤労は知恵をしぼって労働を効率化し、社会に役立つ成果を生み出すこと。分度は収入の枠内で一定の余剰を残しながら支出を図る生活、経営の確立。余剰が持続可能な基礎資源になる。推譲は、分度生活の中から生み出した余剰、余力の一部を、各人が分に応じて拠出すること。これが報徳資金になり、相互扶助、公共資本あるいは弱者、困窮者救済に宛てられ、家政再建、町村復興、国づくりに使われる。

中国には、最後の「推譲」という言葉がないという。尊徳は小田原の田畑家屋敷、家財を全て売り払い、それを仕法の資金として推譲したが、これが日本人の独特の感覚と仕法らしい。知ってました?定額給付金は、消費で経済を回復しようという政策だが、ここは報徳思想に基づき、社会資本の補填と弱者救済に使われるほうがいいのではないか。そういう論調は、国民の側にある。もしかしたら、日本人に二宮尊徳のDNAが引き継がれているのかもと思う。

報徳思想は今外国から逆輸入されているように昨日は外から来られた方たちが草山館長の話を聞いて、もっと学びたいと言われた。二宮尊徳NHK大河ドラマの候補にもなっているという。市長もことあるごとに報徳思想を語っているが、小田原市民が報徳思想を真に理解していなくては、暖簾に腕おしだろう。来年には、「国際二宮尊徳思想学会」が小田原で開催される。研究者だけではなく、市民も参加したいものだ。それには尊徳を知らなくては。