自宅で死ぬということ

newmoonakiko2009-04-16

延命治療は不要、直る見込みがないならさっさと家に連れて帰ること

こんなことを遺言されていたら、困るよね。私も困った。

「楽に死ぬにはどうしたらいいですか」
「なにもしないこと」

どこまでも正直な先生の言葉を信じて、私は夫をべットごと家に連れて帰った。

ちょうど9年目の今日。澄み渡る青空に桜吹雪が舞っていた。

死亡診断書を書いてもらう医師は、親しい地元の開業医にお願いした。毎日の点滴は、訪問看護のナースを派遣してもらった。2度と戻らないと約束した入院先の先生がすべて手配してくれた。今でも、感謝している。信頼できるお医者さんと看護の技術をもったナースがいたことが、どんなに支えになったことか。

窓から見える竹林、ご飯を炊く音や、煮物の匂い、子供たちのなにげない会話。日常の気配に囲まれて、夫は安心したかに見えた。今思い起こしてみても、私たち家族にとって恐れのない豊かな1週間だった。夫や父親が死を迎えているというのに。

彼自身の自らの人生に対する全肯定。はちゃめちゃな人生に付き合わされたという思いの強い私だが、この1週間で私たちの関係は完結したように思う。
激しく生きて静かに死のう。ただしね、俺のようにあんたは生きられない。これが私に対する遺言です。まったく・・・