中原中也

六月の雨

またひとしきり 午前の雨が
菖蒲のいろの みどりいろ

眼うるめる 面長き女(ひと)
たちあらわれて 消えてゆく
たちあらわれて 消えゆけば
うれいに沈み しとしとと
畠の上に 落ちている
はてもしれず 落ちている

お太鼓叩いて 笛吹いて
あどけない子が 日曜日
畳の上で 遊びます

お太鼓叩いて 笛吹いて
遊んでいれば 雨が降る
櫺子(れんじ)の外に 雨が降る

        「在りし日の歌」より

出だしの2行は忘れがたい。が、本当に奇妙な詩だ.中也ならではの変調といえば、そうなのだろうが、昔読んだ時は実に居心地が悪かったのだが、今読むと格別な哀愁が漂う。

今日は、実にひんやりした一日だった。仕事を終えて、お堀端を歩く。

五月雨(さみだるる)路地行く人のみな淡き

皐月闇鯉背を見せてジャンプする