村長ありき

貧困と病。このふたつは背中合わせの関係にある。政治が、人々の幸福のためにあるならば、このふたつはどうしても解決しなければならない。昭和30年代、豪雪、貧困、高死亡率という三重苦の岩手県沢内村が、村民の自治の力によって健康で誇りの持てる地域になっていくまでを描いたのが、長編記録映画「いのちの作法」だ。

「村長ありき 沢内村 深沢晟雄の生涯」(及川和男著 新潮社)はこの映画の原点。国にさきがけて老人や乳幼児医療を無料化し、地域の医療と保健衛生の建て直しに情熱を傾け実現させた深沢村長。「生命行政」と簡単にいうが、この奥深さに感じ入ってしまった。貧困と病を自己責任とすることは簡単だが、そういった切捨ての論理が社会の大きなひずみとして返ってくるかは痛いほど経験した。

しかも、ただお金をばらまいただけでは解決しない。60年経て、国民の医療費は増大したばかりか、自殺者の数は3万人を超える。豊かさの中の貧困は心と体を蝕み続けている。

民主主義の基本の人命尊重こそ、政治の最高、最終の目標だという深沢村長の言葉が重みを増している。


今月12日、小田原市民会館小ホール6時半から「いのちの作法」の上映会と「いのちを大切に」=人命尊重を掲げる加藤市長の話がある。「いのちを大切に」はますます切実だ。ぜひ、ご参加下さい。(当日券あり 1000円)
http://news.katoken.info/?eid=924289