[食]『The Cove(ザ・コーヴ)』

和歌山県太地町のイルカ漁を批判的に取り上げた作品が、今年のアカデミー賞ドキメンタリー部門の最優秀賞に選らばれた。環境保護団体がイルカ漁を隠し撮りした映像を使い、「高濃度の水銀を含むイルカ肉をクジラ肉として販売している」などと糾弾している。国際東京映画祭で上映されたらしいが、私はある会合で観た。

これから日本でも一般公開されるというので、太地町では死活問題として抗議。漁師の人たちの顔にボカシが入り、イルカ肉に含まれる水銀量については議論があるというクレジットが入るという。私が観た時には、水銀問題はとってつけたような気がした。もし、この問題で日本人に警告を与えるのなら、もう少し科学的な裏づけが必要だっただろう。

ルイ・シホヨス監督は、「日本バッシング(Japan bashing)」が目的ではないと強調し、「安全ではない量の水銀を含むイルカ肉をクジラ肉と思わされて食べさせられている日本人」に向けた「public health warning(公衆衛生上の警告)」だと記者会見で述べている。映画の主役は元イルカトレーナーからイルカ保護活動家となったリック・オバリー氏。この人、会場でポスターをもって歩いていた。何を書いてあるかと思ったら、「text DOLPHIN to 44144」携帯メールでこの番号に「DOLPHIN(イルカ)」と送信して下さい、つまりイルカを守る署名運動だったんだ。

さて、このプロバガンダ映画に日本人としてどう対応するのがいいのだろうか?ちなみに、プロバガンダ映画とは政治的宣伝を目的とした映画の総称。しかし、アメリカ環境医学会が人体に悪影響を与えるとする遺伝子組み換え作物を無差別に食べるアメリカ人に公衆衛生上の警告だといわれてもね。