[食]幕の内弁当


芥川賞作家絲山秋子の「妻の超然」の中に「小田原は幕の内弁当のような街だ」から始まる一節がある。「ごま塩をふったご飯を真っ白な壁の小田原城に見立てるならば、商店街は色とりどりのおかずのように立ち並ぶ」と続く。いかにも、おいしそうな街ではないか。

一応、お弁当の具材はすべて揃っている。しかし、幕の内弁当に集約してしまうと面白みに欠ける・のかもしれない。何か足りなければ真剣に探すが、足りてしまえば、それ以上考えることもない。創造という道がなければ、洗練をいう道はどうかな。

夕闇にただずむ「ごま塩をふったご飯」を眺めながら帰ってきた。「塩味のきいたお吸い物」の風がふいているよ。