[暮らし]福島の苦しみ

このフィルムは、国際有機農業映画祭の実行委員が、原発事故後すぐに福島の有機農家の元へ行き、その心情を語ってもらったもの。「それでも種をまく」というタイトルが、さまざまな議論を呼ぶことは承知の上で決めた。ことに編集にあたった若い女性は、自分は福島に行けないという矛盾の中でこの映画を世に出すことに苦しみに苦しんだ。なにか見ていて気の毒なぐらいだった。

今でも、福島の農家には、健康のために県外にひとまず出てほしいし、たとえ放射線量がNDであっても、少なくても1年、2年は出荷しないことが禍根を残さないと思うのだが、今さらどうにもならない。「それでも種をまく」とは百姓魂といいかえてもいい。雨の日も炎天下の日も体を使って作り出してくれた作物で私たちはいのちを支えられているのだ。農業の本質はそこにある。「それでも種をまく」は、まず種をまく人に感謝し、理不尽な立場に立たされた人へ寄り添うという基本的な人としてのありようを試しているように思う。人は理屈では生きていない。