なんだか懐かしいトロッコ電車

newmoonakiko2006-05-21

小田原国道沿い南町商店街では、今さつき祭りが行われている。今年の目玉は、ちょうど、この商店街の先の西海子小路から熱海まで走っていたいわゆるトロッコ電車の展示。芥川龍之介の「トロッコ」は、この人車鉄道の工事現場が舞台だ。「トロッコ」をどんどん押していったら、夕暮れになってしまい、急に心細くなって家路につく少年の話だ。足元だけを見つめてひたすらトロッコを押していく。ふと後ろを振り向くと、家から遠く、あたりは夕暮れだ。その時の驚きと恐怖。実際、トロッコが進むみかん山を歩いていくと、その感覚がわかる。今だって、左手に海を見ながら、どんどんどんどん歩いていきたくなる。しかし、明治28年、よくぞ小田原から熱海まで鉄道を引こうと考えたものだと感心する。小田原ー熱海間25.6Km。駕籠で6時間かかっていたところを約4時間で走ったそうだ。今では、高速を使えば、小田原ー熱海間は、車で30分。JRで20分。新幹線で10分といったところか。一車両に客は平均6人、それを2〜3人の車夫が押したという。6両編成で小田原熱海間を日に6往復したそうだ。当時の熱海、伊豆山、湯河原は、政財界の大物や文豪の一大保養地。志賀直哉が「へっついのような小さな機関車」と呼んだのが、これだ。ちなみに大正12年関東大震災で軌道は寸断。復旧はかなわず、翌13年に幕を閉じた。乗ってもいないのに、なぜか懐かしい想いがするのは不思議だ。