梅はまわる

newmoonakiko2006-07-06

小田原は梅の里である。20数年前、小田原に移り住んできたばかりの梅雨の晴れ間、どの家でも梅が干されていて、さすがに梅干しの名産地だと感心したことを思い出す。自分の家に梅の木がなくても、6月になれば親類縁者、あるいは知人から、梅が届く。梅は買うものではなく、まわってくるものであり、梅干も買うものではなく作るものだった。家々では、その代々続くやり方で梅干を作る。百軒あれば百通り、百味の梅干が出来上がる。その地域のたくさんの人たちの奥深い知恵があればこそ、梅干は小田原の名産品になったのだろうと思う。しかし、今では梅干しを手作りする人は少なく、小田原産ではない添加物漬けの梅干しをスーパーで買う人も多い。
ところで、今日友人がおもしろい話をしてくれた。夕方、仕事を終えて家に帰る途中、自転車で大きな荷物を今にもよろけそうに運んでいるおばあさんにであったので、思わず、手を貸した。歳の頃80歳ぐらいか、そのあばあさん曰く、「今年は梅が採れて、採れて。今から友達の家に持っててあげるところだけれど、もう日も暮れてきたことだし。どう、あなた、もらってくれない?」続けて「ここで会ったのは、地獄に仏」地獄に仏?「梅をすてては罰があたる。もし、すてるなら、土に一つづつ埋めなくてはいけない」。これを聞いて、友人は「頂きます!」と答えたのは言うまでもない。
そんな言い伝えが小田原にあるのかないのか分からない。が、この土地に住む人たちの暮らしと健康を支えてきた梅を大切に想う気持ちをひしひしと感じることができる。地獄に仏の友人が作ったのは、梅干しではなく、すぐ食べられる梅ジャム。2度、茹でこぼしするのがコツという。ほどよい酸味がいける。「ねえ、すごい量できちゃってさ。もらってくれる?」友人へのお礼の梅が、梅ジャムになって私のところに回ってきた。ラッキー!