[教育]子どもは数をどのように理解しているか

newmoonakiko2006-11-24

算数をどう教えるかより、子どもたちは数をどう理解しているかの方に興味があった私が見つけた本。吉田甫著「子どもは数をどのように理解しているか」は、実におもしろかった。子どもたちが、どのように計算を間違えるかに着目したのだ。その結果、間違いにも法則があることを発見する。もっとも、誤りの中身やその意味を追及するきっかけとなった最初の研究は、アメリカの心理学者、ブラウンとバートンによって今から30年ほど前に行われていたらしい。間違えるには一貫した方略があり、子どもたちはそれに従って誤った答えを出しているのだという。彼らの研究で優れているところは、誤りの方略を推定しただけでなく、子どもはなぜそうした誤った方略を作り出したかに関する考えを提案したところにある。ここから、吉田先生のすごいところは、「子どもの間違いに目を向け、彼が持つ論理を推定していくことは、一人ひとりの子どもについて彼がどのような知識をもち、どのように問題を解決しようとするかを知ることである。このことは、たんにある子どもの算数の点数を知って、その子どもは算数がよくできる・できないという表面的なレベルではない、より深い子ども理解につながっていくと期待できよう」という点にある。算数を教えながら、子どもの内面を理解できる。子どもの内面を知らないで、どうして算数が教えられるか。たぶん、私が学校の教師ではないから、すっとお腹に落ちたのかもしれない。高学年になるほど、数学の学力を落ちている現状を「子どもの論理に合わない教育システムだからだ」と喝破している。子どもの論理だけではなく、子どもの生理にあわないのが、今の教育システムかもしれない。私は、吉田先生が教育審議会の委員になってくれたらいいなぁと心待ちにしているのだけれど。
「子どもは数をどのように理解しているか」新曜社 2266円
「数の世界」と子どもたち くもん出版 200円