芸術の秋・江戸の誘惑

newmoonakiko2006-11-26

学校で世界史と日本史は別に学ぶのだが、そのせいかどうか同時代性という見方ができるようになるまで、なかなか時間がかかった。美術の世界も、日本の美術が世界の美術界にどういう影響を与えたか、なんて、ただ一言、「日本の浮世絵は、ゴッホに大きな影響を与えた」のみ。日本人に愛されるゴッホの秘密は、ここにあったのかと納得がいったことがあった。さて、浮世絵である。アメリカ・ボストン博物館で所有されている約700点の肉筆浮世絵の中から選りすぐりの80点が展示されている。いわば、浮世絵の里帰りだ。1881年フェノロサと共に来日したアメリカの富豪でもあり医者だったウィリアム・ビゲローさんが、浮世絵に東洋の美を見て、感動して(たぶん)買い集め、ボストン美術館に寄贈したという。日本の美術の近代化(=西洋化)に貢献したフェノロサには、浮世絵を美的に捉えられなかったようだが。その影響か、江戸で花咲いた浮世絵は一挙に衰退し、美術界の傍系となる。勿論、日本人の中でも浮世絵の美を理解し、散逸するのを止めようとする人物はいたようだ。逗子開成中の校主ともなる福田財閥の福田イツ蔵、MOA美術館を創設した岡田茂吉明治維新のすぐ後、日本文化が否定されていく流れの中で、ビゲロー氏の浮世絵に美を見た感性には日本人として感謝せねばならない。こんなに豊かで素晴らしい浮世絵が、こうして一堂に見られるのだもの。ことに葛飾北斎の「唐獅子図」「鳳凰図屏風」に私の目は釘付け。北斎、あなたは、天才だ!12月10日まで開催中。その後、またボストン美術館の倉庫に帰る。