[食]福士さんのりんご

newmoonakiko2007-01-03

最初に会ったのは、弱冠22歳。自然農法でりんごを栽培するーそれが、青森県浪岡町在住の福士利生さんの目標だった。彼の想いを支援しようと、私よりも1回りも2回りも上の女性たちが、立ち上がった。その中には、料理研究家の辰巳芳子さんもいたっけ。それから、12年。「さんさ」という品種で無農薬栽培に成功。栽培技術の腕も上がり、今では東急百貨店や自然食品店でも取引きされるようになった。横浜から弘前まで夜行バスに乗って取材に出かけたのは5年前か。私も若かったなぁ。岩木山の麓、清冽な光を浴びるりんご農園。ふかふかの土。若い奥さんと小さな坊やを従えて、農園を案内してくれたっけ。
「神様にささげるような農業もいいけれど、自分たちが生き延びるための農業をやらなくてはと」と思うようになったという。大人になったなぁ。
それというのも、「さんさ」はりんご栽培に大敵の「黒星病」に強いという性質がある。しかし、これが周辺農家にとっては大変な問題なのだ。青森県には「りんご黒星病およびりんごふらん病延防止条例」があって、もし黒星病が発生した場合、きちんと農薬を撒かなかった農園に行政指導が入るんだそうだ。それも、半径15Kmがその対象になるという。「だから、簡単に有機農業、無農薬とか都会の人がいっても、農村地帯にあればそれは無理なんですよ」。もっとも、せえーのってことで、全部有機農業に変えればいいかもしれないが、そんなことはまだ先の話だという。なるほど。実に大人だ。
りんごの花が咲く5月ごろ、また来てと言われた。ロングインタビューに答えてくれるという。よくよく聞いてみると、離婚を経験し、今は新しいパートナーと再出発しているという。いろんな現実にぶっかって、逞しくなっていくのだわね。さて、初夏の約束。夜行バスで行く元気があるかどうかが問題だ。