[食]作物とナイフ

newmoonakiko2007-01-25

鎌倉市の市立中学校、技術家庭科の先生に会いに行く。今から14年前のこと。みかん栽培をしていた先生のお兄さんが、農薬のために肝臓病を患ってしまう。この時まで、前例に従って、栽培を教え、料理を教えてきた先生だったが、このままでいいのかと真剣に考えたという。
当時は、環境問題が大きくマスコミにも取り上げられ、リサイクル社会をめざす時でもあった。でも、リサイクルだけでいいのか?自然破壊をとめるだけではなく、もう1歩進んだ解決策はないかと試行錯誤していた時に比嘉教授の「EMは地球を救う」に出会った。何か明るい未来を感じさせる本だったという。
以来、生ゴミを堆肥にして子どもたちに野菜を栽培させ、調理をさせ、どんなに気をつけても人間が生きていく上で出さざるをえない汚染を浄化源にかえる、生活の方法を教えてきた。子どもたちは、EMを使って様々な実験をし、環境に良い微生物を増やせば、汚染はなくなることに気づいていく。14年間の積み重ねは、すごい説得力を持つ。
もののけ姫」の映画を見る。文明と自然の相克を考える。文明の象徴のナイフを自分で作る。自然の産物である作物を生ゴミを堆肥にして自ら作る。ナイフと野菜を使って食べるものを作る。最後は、食糧問題を取り上げ、平和について学習する。これが、先生が行き着いた技術家庭の授業だ。
日曜日の夜、明日生徒に会えると思うと、ワクワクするという。そんな先生も、生徒指導にあたった4年間は、月曜日が来なければいいと思ったという。「今、思うと鬱だったんだね。いじめる子にも、その理由がある。でも、僕にはどうしようもない。つらい時間だった」と。今は、生徒たちが、学校にいる時は、楽しく、何かひとつでも学べるように、ただ、それだけを考えて教壇にたっているという。14年前に比べて、人間の関係も自然の様相も、けっして明るくはない。が、自殺まで考えたピンチを潜り抜けた先生、決してあきらめずに、新しい種を撒き続けている。

写真は、釘で作ったナイフ・生ゴミ堆肥で栽培したインゲンのお料理 生きる原点なのかもしれない