おまえはなにをしてきたか

newmoonakiko2007-08-26


思い立ってJR山口線に乗り、湯田温泉中原中也記念館を訪ねる。生誕100年を記念する企画展「小林秀雄中原中也」。恩師みずからツアーを組んで吉田ゼミ元女子大生たちが、ここを訪ねる約束だった。「もう混浴でいいだろう?」と普段の先生とは思えない発言に私たちは、びっくりした。今なら、冗談で返せるのだけれど。なにせ、昔は女子大生のあこがれの人だったのだから。しかし、その約束も果たさず、先生はあの世にいかれてしまった。
先生、きたよ。となりで、不肖の弟子に解説してくださって、ありがとう。中也の死を悼む小林の文章を読んで不覚にも泣いてしまった。文学もまた人生である。写真の答 30歳

小林秀雄の筆になる詩碑が、記念館の近くの公園にある。

これが私の古里だ
さやかに風も吹いている
あ丶 おまへは何をして来たのだと
吹き来る風が私にいふ

「帰郷」の一節だが、2行目と3行目の間に「心置きなく泣かれよと 年増女の低い声もする」という詩句が省かれている。100年前の駅舎とも思える「湯田温泉」駅のベンチに腰掛けて、涼風に吹かれると、年増女の声は不要とする、小林秀雄の批評的精神が慕わしくなる。