[食]女の台所

とある集まりで、女性4人で朝食を作ることになった。あり合わせの物で、こちらも冷蔵庫の大掃除だ。皆さん、私よりもお姉さんで、台所仕事はお手の物。経験豊富なみなさんばかり。日々のこまごまとした台所仕事が個性豊かな人格を作っているといってもオーバーではない。というのも、自分の料理の仕方が身についてしまっている方々にとって、大根の切り方ひとつ、水の張り方ひとつ、それぞれを主張されるのだ。

誰が、台所の主導権を握るか。最初の数分が勝負どころで、料理の苦手な私は、ハラハラする。「料理の上手な人が主導権をとる」。台所は、極めて、はっきりしている実力の世界なのだ。ところが、調理法には人の数だけ方法があるのだから、いわれるままにはできない。なにせ、みんな、料理できるんだから。毎日、食べてるんだから。

「だめだめ、もっと薄く切るのよ」「ああ、薄すぎる」・・「何センチかいってよ」
「塩加減は適当に」「ああ、入れすぎよ」・・「ふん、自分で入れてよ」
果ては、お茶の入れ方、モチの焼き加減・・ヤレヤレ。

誰かのやり方に合せるというのが、いかに難しいか。自己主張するリーダーをたてながら、最後は自分のお味で仕上げる。そこらの按配を心得ている人がいるといないとでは、台所の雰囲気が違う。今朝のバトルもすごかったが、できた料理は、朝食とは思えないほど、豪華で、みんなで「おいしいね」と言い合って、食べた。あのいがみ合いは何だったんだ。こうやって、料理は受け継がれていくんだが、コンビ二のお弁当を食べていたら、争いもないかわりにおうちのお味もなくなる。

もっぱら、台所の女性たちの観察に忙しい私の仕事は、後かたづけ。万年、大量の食器を洗うことでは、料理の腕は上らないが、なぜか、一番感謝されている。と、思ってる。