カンボジアの地雷

昨年公開された映画「闇の子供たち」(阪本順治監督・原作は梁石日)。タイのアンダーグラウンドで行なわれている幼児売買春、幼児虐待、臓器売買といった深刻な内容で、できれば見たくない。で、実際私は見ていない。

今日、 長年カンボジア支援活動を行ってきた栗本英世さんの口から淡々とまったく同じ状況を伺い、踏まなくてはならない地雷もあるように感じた。知りたくないではすまない。そういう機会が巡りきたのだろう。蓋をしておきたい人間の悪の世界と同時に手を差し伸べなくてはならない人々を見捨てる国際貢献の欺瞞が、一部の人々だけではなく、普通に暮らす私たちの目にも明らかになってきたことは、なにか神様の意志のように感じる。

タイ語カンボジア語で「チャンス、機会」という意味の「オカさん」と呼ばれる栗本さんは1951年滋賀県近江八幡生まれ。従軍慰安婦という過去を持つ母親の苦しみと哀しみのかたわらで、幼少の頃から自ら働き、家族の生計を賄う。10代で福祉に強い関心をもち、台湾の補仁大学で中国語を学び、海外でのボランティア活動を開始する。中国、ラオスインドネシア、タイなど東南アジア諸国で、主に子供たちのための支援活動を行う。
1996年より、カンボジアにて『カンボジアのこどもの家』を開設。現在、地雷被害で苦しむタイ・カンボジア国境の町ポイペットで、地雷教育と識字率の向上のために寺院の中に『寺子屋』を開設し、学校にいけない子供たちを支援している。

しかし、現実はそう簡単ではない。学校はできても働く場がない。農業にしても種まきから収穫まで待てずに子どもたちは売られていく。食べられない悲惨。難民の行き着く先は、水もなく草も生えない荒地なのだ。そこに生まれる子どもたちが、物のように売買されている。

ボランティアとは、けっしてお金や物を施すことではなく、苦しみの中にある人の側に付き添うことであると。地獄を見た人の解脱したボランティア感に久しぶりに泣いた。