こんな小田原

毎日忙しくしている。今日もチケットを買ったのを思い出して、出先からトンボ帰りした。小田原市民会館大ホールで開かれた第74回市民劇場子どもたちに贈る伝統芸能「おだわらたまてばこ」。主催は、小田原文化サポーター、小田原市小田原市公益事業協会だ。小田原市が、自主企画で興行をうつことは珍しい。新市民ホール建設を前に文化に親しむ市民を増やすということも一方で必要なことだ。小田原文化サポーターも、ホールのスタッフとして動ける人材として学んでいる。プロ並みに客席案内をしてくれた人は、近所に住む友人だった。

今回は、小田原の橘地区に伝わる下中座と小田原出身の柳家三三の落語。1000円で楽しめるなんて、すばらしい。そもそも子供向きなのだけれども、わかりやすい解説は、大人にだってありがたい。ことに下中座は江戸時代から知られた人形座で、この座の歴史を聞くと小田原の地域性がよくわかる。江戸をめざし旅興行している途中に下中村(現在の橘地区)で村人たちと意気投合し、その座長格が村に滞在して村人たちに人形遣いを教えたことから始まる。

諸芸禁止の時代には、幕府の目を逃れて横穴古墳の中で稽古をしたというのだから、村人たちの心の拠り所だったのだろう。明治末期には、相模人形中興の祖の西川伊左衛門によって江戸系の人形操法を伝えたという。関西から伝わり、関東に磨かれ、小田原で脈々と伝えられて昭和55年には国の指定重要無形民族文化財となっている。

今回の演目「坂田金時怪童丸物語 足柄山の段」。全国に発信してもいいぐらいの小田原が誇る伝統芸能なのだと思うが残念ながら、会場は満席にはほど遠かった。今度、こんな機会があったら東京の友人たちを呼んで自慢したい。