太田治子さん

newmoonakiko2010-01-23

太宰治が実の父親だったら、あなたはどう考えますか?「斜陽」の舞台、下曽我で生まれた治子さんの半世紀は、自問自答だったのではないか。太宰治という男はなにものだったのかと。

小田原市民会館で開かれた太田治子さんの講
演会。300人を超える市民を前に開口一番「太宰治は、生誕100年を祝ってもらうほど国民的な作家ですか?」と切り出した。う、っと思った太宰ファンも多かったのではないか。治子さんは、3年がかりで完成させた林芙美子評伝を通して、作家の戦争責任を考えてきたという。戦争責任、その一点において、太宰を国民的作家などという論壇やマスコミは間違っていると主張している。そして、その延線上に文学者・太宰と決別し、父親をも超えていきたいとはっきりとした意思を表明している。

昨年上梓した「明るい方へ」は、その決別の一冊である。この本が出版した後で、「斜陽」の舞台の雄山荘が焼失した。「すべて、これで終わったのだ」。会場の椅子に座った100歳の太宰治が、グットバイといって立ち上がったのを何人の人が見たか?

ラカンの治子さん、何がどうであれ、「小田原」はあなたのまぎれもない故郷だ。いつでも、帰ってきて下さい。