東大安田講堂で

INSLA(Integration of Natural Science and Liberal Arts 自然科学"と"リベラル・アーツ"を 統合する会代表多田富雄)が主催する「日本の農と食を考えるー農・能・脳から見たー」という講演会。人間国宝野村万作が演じる「三番叟」から始まり、上野川修一東大名誉教授らの講演、加藤登紀子の話、最後は、討論という豪華メンバーによる多彩なプログラム。「知の象徴である安田講堂で開催されるにふさわしい」と主催者挨拶にあった。たしかに歴史的建築物である安田講堂。1969年には、破壊すべき知の権力の象徴だったこともあるわけで、今思えば破壊されずによかったのかもしれない。

私が一番興味を持ったのは、第2部農の部である。発言者は、上野川修一東大名誉教授。「人間は考える腸である」など、今人気の学者先生。免疫学の立場から、「農の危機は、生命の危機である」と話した。辻彰金沢大学名誉教授は、薬物動態制御学という難しい学問からみた「化学肥料の体内動態と検証」。簡単にいえば、消化器の機能と生理から食の安全を考えると有機農業しかないと発言。宮城県の松本明さんが、「硝酸態窒素」(未熟堆肥を使った場合、野菜に残留する物質で体内に入るとガン発生物質にかわる可能性がある)のない有機堆肥について発表。化学肥料の土で栽培したホウレンソウ、完熟堆肥で栽培したホウレンソウを写真で見せてくれた。化学肥料の方が生育が悪い。全体的に完熟堆肥を適量に入れた有機農業が、これからの農業だというようにきこえたが、これに少し違う反応をしたのが、生源寺眞一東大農学部長だ。「環境保全型農業」をすすめることが一番で、有機農業は少し方向性が違うと発言している。東大農学部は、何の研究をしているのか知りたい。