井上ひさしさんのこと

はじめてまじかで接した井上ひさしさんは、少し背が丸くなられていたが年齢など感じさせなかった。舞台の袖で井上さんの言葉をひとことも聞き逃さないようにしようとしていたあの日から2年もたつ。井上さんは、2008年4月に小田原の市民ホールの建設で異議を申し立てる市民の応援に駆けつけてくださったのだ。小田原が母上の生まれ故郷ということもあってか、とても熱のこもったお話だった。講演を終えた食事会で「どんなことでも協力してあげるよ」との言葉が、どれほど私たちを励ましてくれたことか。

その日は、劇場とは何か、はもちろんだが、イタリアのボローニャ市民が立てた「4つの誓い」を紹介されたのが印象深い。ひとつ女性力の登用、2つ歴史的建造物の保存と再利用、3つ土地の投機的売買の禁止、4つ職人を育てて分社化すること。

この会の1ケ月後、小田原市は市長選があり、市民自治を掲げる加藤憲一市長に交代することになる。行政に対してリーダーシップがとれない、決断力がない等、加藤市政には厳しい批判もある。新しい小田原へ!を選択した市民が馬鹿にされているようにも感じる。ここで、ひとつ小田原市民も奮起せなきゃいけないんじゃないか、と井上さんに言われているような気がする。ご冥福をお祈りします。ありがとうございました。