米飯給食

小田原市根府川の市立片浦小学校は学年1クラス、計57人の市内で一番の小規模校だ。この学校が、家庭用炊飯器で自校炊飯する学校を募集した農林水産省の事業に県内で唯一手を挙げたことはあまり知られていない。JAかながわ西湘を通して無償貸与された炊飯器で炊いたご飯を子どもたちは食べているわけだ。私は、KちゃんやOくんのホカホカご飯を食べている顔が想像できてうれしい。

片浦小学校は自然にはめぐまれてはいるが、市街地に遠く強風でも吹けばJRも止まり、道路も通行止めになるような立地にある。こんな小さな学校が、自校方式の給食でないことが不思議なのだが、ともかくこの事業の応募条件が米飯回数を増やすことであったため、片浦小を含めて計3校の小中学校を受け持つ共同調理場では、週平均2・5回の米飯給食を、さらに年9回分増やしたという。

この「米飯学校給食回数増加支援事業」は2009年度補正で10億円の予算で、炊飯器1台2万円、炊飯器の備品代上限10万円が出たという。だが、炊飯器導入の付帯設備は自治体負担に。応募があったのは全国で17市町村44校にとどまり、9・9億円返却することになったったそうだ。片浦小は、既存の電気容量で炊けたため付帯設備は不要だったという。

神奈川新聞によれば、県内の市町村で公立小の米飯給食の実施回数が最多なのは大井町。4月から週3回を4回に増やした。同町給食センターによると、「食料自給率の向上」「日本の食文化振興」「食習慣に自信を持てる子に」などの意義から踏み切った。委託炊飯のためパンよりやや高額だが、おかずで調整してやりくりしている。

大井町に続き、6月下旬から、これまでの週2・2回を週4回に大幅アップさせるのは、大和市。増加の理由として、市は「食の欧米化が進み、子どもたちの健康のためにも食文化の学習機会を設ける必要が高まっている」などと健康面を前面に出している。これまでは先割れスプーンだったが、4月からは、はしを導入、和食の献立を増やす。ここ数年、米飯給食の実施回数を増やす県内の市町村は増加傾向にあるが、その理由は「世の中の動きが米飯給食推進なので」「国が米飯給食を増やすよう言っているから」…。具体的な教育的意義について言及がない自治体もあった。
県学校給食会の担当者は「国が米飯給食を増やせと言っているのは、米が余っているから」と話す。神奈川県は米の生産量が少ないといい、「県民全員が毎食ご飯を食べたら1週間で県産の米は尽きる。いまは給食の米飯は県産だが、米飯回数を増やしたら他県産の米を食べなくてはならなくなる」と増加に消極的だ。

08年度は米飯の実施回数が週2.6回と、大阪府と同率で全国最下位だった神奈川県。米飯給食は、子どもの健康や食文化の形成に必要との認識が市町村にあるかどうかが、最下位を脱出できるかの鍵になる、とある。

県産のお米では米飯回数を増やせないことは理解できるが、なぜ他県産の米を食べなくてはならなくなるという論法になるのだろうか?米どころの米を食べればいいのだ。小田原市は、2.5回だというから、全国の中でも最下位に近い。大井町大和市にできて小田原市でできないわけはない。小田原市の給食を週4回米飯給食にすることが、TPPに反対することに通じると思う。せめて今を生きる大人の責任として米飯給食を週1回増やすことぐらいしたいものだ。

ついでながら、09年度は全国の米飯給食の平均は週3.2回。電気炊飯器よりも10億円でお米を買い上げ、米飯をすすめたい学校に無料で配給したらよかったのに。蛇足ながら、国のいう完全給食とは、おかず、ご飯、牛乳。牛乳も悪くはないが、おかず、ご飯、味噌汁でしょ。