[食]10年一昔

10年ものの梅酒。夫が仕込んで飲まずに行っちゃった。流しの下で眠っていたのをようやく空けてみた。そのお味、なかなかのものだ。10年、およそ3650日、87600時間。ようやく、清算できない想いが、おさまるべき引き出しに思い出として納まった。長いといえば長い、短いといえば短い10年。

今、「悲惨の中の希望」と言われても多くの被災者は受け入れがたいと思う。すぐ側にいた人が一瞬にして消えたのだから。青梅が時間と共に芳醇な酒になるように哀しみもまた深い味わいとなる。台所に転がしていた酒びんの蓋を開ければ止まっていたはずの時間が流れる。

なんとか10年、修羅のようにでも自堕落にでもいい生き延びて。