循環を切るもの

排せつ物がたまった牛舎で、牛が動けなくなっている。原発事故の影響で野菜農家が作付けを断念し、堆肥(たいひ)の提供先を失って窮地に追い込まれる農家が相次いでいる。

たまっていく排せつ物の中で動けなくなった牛たちが、じっと飼い主を見つめている。東京電力福島第1原発から70キロ離れた福島県中島村原発事故により野菜農家が作付けをあきらめ、肉牛農家が堆肥(たいひ)の提供先を失って大量のふん尿を抱えたまま行き詰まっている。放射性セシウム汚染による肉牛の出荷停止が解除されて2カ月余り。福島の農業が崩れつつある。

これが福島県畜産農家の実態だ。牛のことまで考えられない自分の想像力のなさを思い知らされている。そもそも牛はキレイ好きなのではないか?糞にまみれるなんて生きているのがいやになるだろうが、牛は自殺できない。農家が牛肉農家に牛糞堆肥をもらい、牛の餌となる稲わらを農家が提供するという循環を見事に切ってしまったこの罪。人間は許されるのだろうか?