国際有機農業映画祭

2011国際有機農業映画祭が終わった。今回が5回目になるが、2回目から運営委員として関わらせてもらっている。映画選びから、日本語訳までやってしまう多彩なメンバーが揃っていて刺激になる。さらに今回は、自前のフィルム1本、本邦初上映3本だ。これも、いのちをつなぐ有機農業を救いがたいまでに痛めつけている福島原発事故、追い討ちをかけるTPP問題が、ある意味でゆるんでいた私たちの志というネジを締めた。今、ぼんやり時を過ごしていてどうするの?

自主映画「それでも種をまく」は、福島県のベテラン有機農家たちのインタビューで構成。どんな困難ななかでも種を播くのが百姓であって、その百姓魂が消えたときに私たちは食べ物を失う。放射能という見えない敵を恐れながら、有機農業の知恵を活かしながら種をまく。しかし、今回の事故は、提携と呼ばれる生産者と消費者との関係も分断してしまった。顔の見える関係だからこそ、なんだかつらい話になる。実際に会場で話された中村さんと大内さんは、異口同音に「私たちのつらい思いは2度と誰にもさせたくない」と言われ、支援に感謝すると共にこれからも福島をよろしくと挨拶された。ほんとうに経済的にも精神的にも瀬戸際のところにあることは誰の目にも明らかだ。このまま、国が小さくても貴重な有機農家を見捨てるわけがないと思うが、2日間参加した唯一の政治家はツルネンマルティ議員だった。ただし、このパネルデスカッションには帰られてしまったのが残念。

今、安全安心をうたい文句にする生協が加入者を増やしているが、大きくなればなるほど生産者と消費者は遠くなる。残念なことに消費者が望む作物が集まるとは思えない。ましてや、有機農家の苦しみなど理解することは難しい。まず、福島の教訓をいかすためには、脱原発に舵を切ると腹の底から決めることだが、そうした上で、近くの農家のつくる野菜を食べること。それもいのちを輝かせてくれるもの。そして、その対価を支払う。そうした関係性を可能にするのは有機農家だけだと思うがどうだろうか?あのアメリカでさえ、農業の危機を自覚して、日本で始まった生産者と消費者の提携に原点があるというCSA(Community Supported AgricultureCSA。直訳すると「地域に支えられた農業」) が増えているらしい。日本人が自分が食べるものがどこから来たかわからなくなる前に農業と食べ物を地域に取り戻さなくては。小さいことはいいことなのだ。

西の百姓、古野隆雄さんが未来を見据えたら有機しかない。ここを乗り切れたら大丈夫なんだと言い切ってくれたのは希望だ。変化のときは、つらい。でも、考え行動し続けていけば、そこを抜けて別のステージにたてる。あきらめたら終わりだ。