足があがらない

冬暮光小さき石につまずけり

当たり前のように歩いているが、歩くには足を前に出すだけではなく、足をあげなくちゃいけない。しかし、加齢とともに足があがらなくなる。結果、つまずくのだ。週刊新潮で87歳になる吉本隆明原発についてこう述べている。「科学技術や知識というものはいったん手に入れたら元に押し戻すことはできない。どんなに危なく退廃的であっても否定することはできない」と述べて、「技術開発していくしかない」と結論づけている。いかにも工学的な考え方だが、間違った目的のための技術は、どこまでいっても矛盾を内在してしまうのだ。老いた論客が小さな石につまづいている。