大腸菌の扱い方

7月1日から、焼肉やで生レバーが食べられなくなった。思い出すのは、30年ほど前、夫の肝臓病にレバーがいいよと医師に言われても、安全なレバーなんてないですとはっきり言い返したことをよく覚えている。以来、我が家では生レバーどころかレバニラだって食卓にあがっていない。今さら、生レバー禁止はお笑い草とは思うが、これが最後の生レバを食べたい男女が焼肉やに並んだというんだからみんな肝臓が悪いのではないか。販売禁止になったのは、例の生レバー食中毒事件の調査の結果、生レバーの組織内から病原性大腸菌が見つかったためだ。そもそも牛にも人間にも、大腸にはその名の通り大腸菌が多数いて、普段は大人しく分相応の働きをしてくれるのだが、これが病原性となると赤痢菌からもらった遺伝子で毒素を作り、とんでもない悪さをすることになる。腸管から血液に進入すると敗血症となるといのちに関わる。免疫力が低下していれば、一網打尽だ。増殖した菌は、肝臓にたまる。

ということは、重篤の牛の肝臓を食べたということになる。そんな牛が出回っているということだから、生レバーを禁止しただけではすまないことは子どもだってわかる。

では、どうしてそんな病気に牛がかかるのかといえば、そもそも草を食べる牛に穀物を食べさせているからという実に簡単なことなのだ。穀物を消化吸収する微生物がいないため、本来の遺伝子を受け継いだ大腸菌がなんとかがんばっても適応できないので、内臓も免疫系も弱まってくる。そのため、抗生物質を与えると大腸菌は死滅、突然変異で耐性をもった病原性大腸菌だけが残るというわけだ。

繁盛する安い焼肉やや牛丼やは、心配だ。飛び切り高い牛肉を年1回ハレの日に食べるのが、正しい食し方なのかもしれない。ところで、病原性大腸菌を減らす牛の管理をするというニュースがあったが、まさか無菌のゲージに入れるんじゃないだろうね。牛も自然育児しかないと思うんですけどね。