反旗

俳句誌『小熊座』編集長の俳人渡辺誠一郎さんは、
1950年宮城県塩竃生れ。
啓蟄の日本行方不明かな
影の数人より多し敗戦忌
私にとっては叙情社会派。見上げるばかりであるが、その渡辺さんの震災俳句。
祈りとは白き日傘をたたむこと
手を振れば千の手が振る桜の夜
夏草を眠らせて哭く一樹あり
底意には神が死すとも栗の花
塩辛き水漬く影逝く夜の秋
北溟へ無声慟哭ワガ半旗
壊滅に壊滅はなし稲の花
ことに祈り と 手を振れば は、鮮やかにイメージが浮かぶ。
しかし、私が問題にしたいのは、啓蟄の日本行方不明かなの1句。
予言的でもあったこの句に震災を当事者として経験して、 
北溟へ無声慟哭ワガ半旗の「ワガ半旗」に「反旗」を重ね合わせてしまうのだが、
それは、一方的な私の心象なのかもしれない。

地虫なく天地返しの反旗あげ