ある子供

newmoonakiko2006-02-02

最近の映画では評価が高いフランス映画「ある子供」。こうした映画は、地方都市にはやってこないので、仕事のついでに東京で見るしかない。今日は、たまたま東京に出ることになり、恵比寿ガーデンヒルズまで足を延ばした。この映画の主人公は、まさにどうしようもない、けれども、退廃という言葉には遠い、むしろ健康な青年というのが私の印象だ。少年を手下にして、盗みでその日ぐらしをし、川岸の小屋でダンボールに包まって寝る。どこも健康ではないけれど。その上、恋人との間に生まれた子供を認知はするが、その翌日には、人身売買の組織に売ってしまう。
全然、健康ではない。子供を売って、「また、できるさ」と言い放ついいかげんさ。まったく、最悪なのだ。それを知った彼女が、その場で意識を失い、ことの重大さに気づいて彼は子供を奪い返すが。また一文なしになり、手下にひったくりをさせ・・・。結局は監獄へ入る。彼女が面会にやってくる。この時、なにかが彼の中で眼を覚ますのだ。
不良少年というのは、いつの時代でも映画の主人公になる理由、例えば、社会への反抗とか、をもっていたけれど、この「ある子供」には、そういった理由を見出せない。しかし、普通なら彼の中に眠っている健全な魂を太らすであろう何かが、今の社会に欠落していることは分かる。そういったことは、一切描かれてはいないし、主張もされてはいない。もっとも、底なしの悪の大人の社会もしっかり描かれているのだが。
ただ、「おいおい、だいじょうぶか」と言いながら、ラストシーンで涙が出るのは、見る側の彼への理由のない信頼が最後まで持続されていたからだと思う。もっとも、私の信頼のわけは、ふたりのしっかりした骨格だったけれど。彼らは、フランスパンをかじり、トマト入り粉末スープ、コーヒー、ビールを飲み、クラッカーを食べた。ことにフランスパンをカリカリと食べる青年はよかった。日本にいるベジタリアンではなく、ジベタリアンはいったい何を食べているのだろうか?
寒いせいか最近は見かけなくなったけれど。