[食]食欲の秋に

newmoonakiko2006-10-18

「太ったインディアンの警告」エリコ・ロウ著(NHK出版)を読む。今、アメリカの国民は、過半数が太りすぎで、3分の1が立派な肥満だという。日本も同じような問題を抱えてはいるが、アメリカの方が深刻なようだ。「肥満、糖尿病の撲滅は国家の急務」とする非常事態宣言が出されている。その中でも、最悪な状態なのは、アメリカン・インディアンだという。彼らは、自然の恵みを生かした伝統食で健康な暮らしをしていたのだが、突然現れた白人によって、生活とライフスタイルを「アメリカナイズ」させていった。そのことで、飢餓による絶滅の危機から一転して肥満と糖尿病の危機に陥っているという。どこかの国の事情も同じではないか。著者はアメリカに住むジャーナリストで、コチティー族のインディアン長老の話や、自分たち夫婦の食生活、民族による体質の違いを述べながら、いかにアメリカの食生活が不健康かに言及していく。さらにアメリカの危機は、国民の健康より企業利益を優先させてきた「つけ」だと結論づけている。
しかし、アメリカという国はすばらしいと思うこともある。たとえば、学校の自動販売機では炭酸飲料水の販売はされていないし、米ディズニーランドでは、園内のレストランなどで、子ども向けメニューの砂糖や脂肪分を制限し、フライドポテトの代わりにニンジンを販売するという。これに対して、東京ディズニーランドでは、「それぞれの国の事情は異なるので、日本では考えていない」という。アメリカ・インディアンの警告には耳を貸さないつもりらしい。エリコ・ロウも、この本の最後で、「一人の健康を守るのには社会の努力が必要だ」と強調しているのに。有機農業を守るぐらいでは追いつかないほど、日本の食事情は悪くなる一方だ。「食べ過ぎると肥満になるもの、健康に役に立たない食品は売るな!」と主張してもいいのではないかと私は思う。確かに太ったのを人のせいにしてはいけない。ビールを飲みすぎるのもビール会社が悪いわけではない。が、そうはいっても、食産業は金儲けだけではなくて、人々の健康を守るという使命に早く目覚めて欲しいものだ。