のし餅の郷愁

newmoonakiko2006-12-30

座敷に包丁とまな板が運ばれる。。今届けられたばかりの「のし餅」は、ぷっくら白くて、そのままかじれそうだ。でも、女の力ではうまく切れない。力まかせというのでもないらしいが、いつもはおっかない父が、包丁を大根で研ぎながら、切り分けていく。台所から、お煮しめの匂いが漂ってくる。あぁ、もうお正月なんだ。
それから、云十年。「のし餅」が消えて真空パックの餅になった。いつまでたっても、カビない餅だ。今年は、もち米を手に入れて、のし餅を作るぞ。さて、餅つき機がないので、どこに持っていけば、お餅をついてくれるのかしら?という相談を「菜の花」店主高橋さんにしたら、さすがお菓子屋。即のし餅にしてくれた。
それが、「福の餅」である。切れ目を入れてあるのが、さすが。男要らず。10切れでちょうどの枚数である。さすが。白、赤、緑。3色にしたのも、さすが。店頭に並んでいると、いかにもめでたいお正月気分になる。この「福の餅」のもち米は、長井市菅野芳秀さんのものだ。彼は、レインボープランの会長としてNHKの「食の架け橋賞」大賞を、アジア農民交流センターの代表(山下惣一さんと共同代表)として毎日新聞国際交流賞を、W受賞した今年の話題の人物である。ところが、昨年はあまりの忙しさに自分のもち米を売るのを忘れたんだそうな。やれやれ。そこで、菅野さんの玉子を共同購入している小田原の主婦たちが、ひと肌ぬぐことに。結果的に私たちは、とてつもなく美味しいもち米を食した。その時「菜の花」さんも1枚加わり、正月2日市民に振舞われる「おしるこ」のお餅になり、大好評だった。まさに残り物には福がある。
そして今年、菅野さんのもち米は、大方「菜の花」さんへ届けられ、「福の餅」になった。来年2日「菜の花」あ・ん工房で、福の餅入り「おしるこ」を食べて、福を呼びこもう。そうそう、小田原近辺の方、お雑煮には「福の餅」をどうぞ。
ところで、1月1日NHKスペシャル「ふるさとからのメッセージ」(夜7時20分〜8時45分)に長井市が、元気な街としてオオトリを飾るという。長井市財政破綻に近い市だが、市民は自分の地域を守り育ててきたらしい。小田原市も、続きたいと思う。ぜひ、見て下さい。尚、この街づくりのリーダー役の菅野さんご本人は、録画撮りの時は、鼻水たらして農作業に励んでいたらしく、登場しない。たぶん、この日、菅野さんは一杯やりながら、やれやれという気分で鼻水たらしながら、テレビに見入るのだろう。まぁ、そういうのをうれし泣きと言うんだよね。