最後の晩餐

newmoonakiko2007-06-19

夫と一緒の最後の食事はなんだっけ?亡くなる前日、かぼちゃの煮付けが食べたいと言った。甘辛く煮たかぼちゃをおいしそうに食べた。最後の入院では、すでに重湯も食べることができなかった。しかし、子どもが見舞ったとき、「海苔巻き」をリクエストしたという。子どもは、近くのスーパーに走り、海苔巻きを買ってきた。夫は、それをパクパクと食べたという。私には、信じられないことだった。固形のものを食べる力がどこにあったんだろうか。食べれないということと、食べたいということとは別だったのか。でも、何で私に言わないのよ、と今でも思う。スーパーでなくて、おいしい海苔巻きを作ったのに。
今日、友人が持ってきてくれた茨木のり子の詩集「歳月」。1975年に亡くなった最愛の夫・三浦安信への思いをつづったものだ。およそ30年の長い歳月に40編近い詩が書き留めてあったという。ご本人は公表したくなかったそうであるが、甥の宮崎治さんの手で出版の運びとなった。ひとつひとつの詩をゆっくり味わってみたい。

最後の晩餐という詩の中に 
入院する夜の献立が、昨夜の残りけんちん汁 鶏の唐揚げ ほーれん草のおひたし 「退院してこうしてまたいっしょにごはんを食べたいな」とご主人がつぶやくのである。我が家もそんなものであったんだろうな、と思う。