農村の豊かさ

newmoonakiko2007-07-02

仙台から古川へ北上。2軒の農家を訪問する。おふたりともに70代、食糧難を体験し、現在は専業農家だが、定年まではそれぞれ、勤めに出られていた。今は自然農法を実践し、国の農業政策に真正面から異議を申し立てている。今回のインタビューは、有機農法推進法についてどう考えるかであるが、その話の中でおのずと日本がかかえる構造的な農業問題にも触れることになった。
佐々木一郎さんは、集落13戸のうちの11戸をまとめ、共同で機械を購入し、個人で自由に販売するシステムを作り上げた。すでに機械の購入代金も返済されているという。しかし、11戸のうち10戸は慣行農法。つまり、佐々木さんだけが自然農法というわけである。「どんなに説明しても、てことして動かない」とあきらめ顔だが、この有機農法推進法ができたことで、自然農法のマニュアルを作る意気込みに拍車がかかった。「どう考えても、これからは有機農業しか生き残れない。それには生産者の頭を切り替えてもらわくては」という。佐々木さんの畑は、地域の2つの小学校と1つの中学校の生徒800人分の給食を養っている。子どもたちに本物の野菜を食べさせなければという意識の高い栄養士さんの願いで、佐々木さんの野菜が使われることになった。
一方、内海功さんは、約2haの稲作専門有機JAS認定農家。内海さんは、農業の大規模化、法人化は、農家から土地を奪うことだと手厳しい。麦、大豆、稲作と、3年周期の転作に補助金を出す制度も、化学肥料の投入によって、稲作の収量は落ちるという。「補助金は、国からもらうのではなく、国民の税金だ。国民に安全な食べ物を供給することが農家の義務」と言い切る。しかし、有機農業も、消費者の支持がなければ、生業として成立しない。食の安心、安全というなら、有機農家をしっかり支えて欲しいと注文がついた。そういう意味では、有機農業推進法は消費者が押し進める法律といってもよい。なにせ、農家にはなんの説明もないそうだし、まぁ、個別の補助金もないのだから、慣行農法の農家には関係ないのかもしれない。

しかし、農家を訪問すると、手づくりのおいしい惣菜が次々にテーブルに出されて、驚く。すべて自家製野菜で作られたものばかりだ。農家の経済は、お年寄りの年金に支えられているというが、豊かな食生活は、金では買えない。佐々木さんのお宅でご馳走になったかぼちゃの煮付け。火がすぐに通るので、煮すぎないのがコツだとか。それに甘みがあるので、砂糖は少しでよい。お土産には、採れたてのじゃがいもと大根を頂く。物々交換というが、私にはお返しする物がない。