柚子の会

故奥津久恵さんは、戦後小田原初の本格的な本屋である「八小堂」書店の女性経営者である。その奥津さんの句集「命あずけて」を読んで、私は迷わず奥津さんがつくられた結社「柚子の会」に参加したのだ。

奥津さんが、ご主人を亡くされてから2年目の暮れに「何かしら心が詰まる思い」で詠まれた句が

師走来て運命線を曲げて見る

「その時この句を文字にしてみて思わず泣いた」とある。また、「これがこの道(俳句)への始まりだった」と述懐されている。愛と死は、人を創造的な営みへと誘う。それが、救いになり癒しにもなる。

才能豊かな奥津さんは、精進されて、小田原俳句協会副会長になられた。大久保神社境内の句碑には、杉山夢洋、佐倉東郊さんと共に「鶏頭にそまりし石や猫ねむる」という句が刻まれている。

その「柚子の会」の最後の句会が、きのう開かれた。最後とは知らない私は、突然のことで驚いてしまったが、みなさんご高齢でなかなか参加が許されないのなら、いたしかたないことなのかもしれない。私も、夫を亡くしたその年の秋にさまざまな感情を17文字に凝縮して、なんとか立ち上がることができた。
「その時この句を文字にしてみて思わず泣いた」という心情が痛いほどわかる。

この秋に亡くなられたこの会の世話人山田美千子さんのご冥福をお祈りすると共に会員の大先輩方に感謝申し上げたい。

柚子が大好きだった奥津さんの句

葉がくれに柚子見つけたり神の留守

私も人間としての修業をして、こんな句を作りたい。