人権としての食 

newmoonakiko2008-12-26

先日、まったく農業とは関係のない会の主催者から農業の話を聞いた。岡山県で農業を営んでいられるとかで、挨拶の開口一番にこう話された。
今、世界貿易機構(WTO)農業交渉の会議で関税を8パーセントにするか6パーセントにするかでもめている。もし、6パーセントになったら日本の農業はやっていけない。

でも、私たちに希望がないわけではない。国連人権理事会が、世界貿易機関WTO)農業交渉が国際法で規定された「食料への権利」を順守しているかを検証した中間報告書を公表したが、その中で「ドーハ・ラウンド(多角的貿易交渉)が妥結しても、食料に関する構造的問題は解決されず、食料危機は再び起こる」と指摘して「食料への権利」を守らないWTO合意を拒否すべきだと勧告していると。

日本農業新聞によれば、国連人権理事会の食料担当官であるドシュッテル氏は途上国と先進国の生産性の格差を踏まえ「農政改革を進めて貿易障壁を取り除けば公平な条件で競争できるという議論は、幻想にすぎない」と主張した。その上で「持続可能な食料安全保障を目指すためには、各国とも世界貿易に依存すべきではない。これが報告書のメッセージだ」と語ったという。

WTO加盟国の大使らから聞き取り調査を行いまとめた正式な報告書は来年3月に開かれる国連人権理事会で公表されるというが、この話を切々として下さった農家に感謝したい。まともに食べる、まともなものを食べることは、人間の権利であり、経済行為にかすめとられ、犯されるならば、断固戦うしかない。ただ、資本主義経済下の国家にまともにWTO合意を拒否できるか、これが疑問だ。政権を変えたらできるだろうか?

国連人権理事会は、直接に世界の市民に伝えているのではないか。消費者であり、労働者である、市民ひとりひとりが立ち上がれと。冷蔵庫で食べ物を腐らせている日本人は、人権としての食意識に世界で最後に目覚めるのかもしれないが、その時は、すでに手遅れで冷蔵庫の中は空っぽになる。