チョコレート

私は「チョコレート工場の秘密」のチャーリー少年になりたいと思ったことがたびたびあったが、チョコレートの中に5枚の金色のチケットを入れるチョコレート会社は現れない。
なので、1年に1回、バレンタインの日には、小田原の鴨宮にある小さなチョコレート工場を訪れることにしている。工場長に会うためとチョコを愛するために。
工場長は、学級崩壊という子どもの不可解な世界に触れて、人間味が深まったように見える。生きるということはわかることではなく、わからなくなることだ。
工場の窓から私を見つけた工場長がなんだかとても喜んでくれたように見えたのだが、私の大きな勘違いかもしれない。よぼよぼのおばあさんになっても、チョコレートを買いに行くので、どうだろうか、金色のチケットを入れてはくれまいか。私にではなく、子どもたちのために。