堂々たる玉子

newmoonakiko2006-02-12

「生玉子で食べてくれ」これがこの玉子の生産者菅野さんの第一声だった。「うーん」と唸る私。だって、私の、この世の中で数少ない食べられないものーそれが、生玉子なのだから。ニワトリの飼い方を知れば知るほど、安心して食べられる玉子はほとんどないと確信し、私に生玉子メニューなど存在しなかった。もっとも、イクラ筋子など、およそ「卵」というものを食べることは避けたいという思いもあるのだが。
しかし、食わず嫌いということもある。話の成り行きというのもある。本来、すすめられたら拒否できない律儀な私の性格もある。それにいのちに関わる食べ物を作っている人への敬意もある。
というわけで、食べましたよ。
白身が殻にひっついて、なかなか玉子がご飯の上にのらないのは、新鮮な証拠かな。それとも、私に食べられたくないのかしらん。玉子だって食べる人を選ぶ?(そんなことはない、ない)
黄身がぷっくりと盛り上がっている。しっかりしてるから、楊枝の20〜30本は立つかもね。濃厚卵白の高さもいい具合。水様卵白の透明感。(専門用語を使ってどうする)
北国の大地に放し飼いにされ、澄み切った大気と風に戯れ、朝日連峰から湧き出る水と地場の餌を食べている、今時珍しいニワトリの玉子。薬剤、添加物ゼロ。黄身は自然の色。(講釈はいいから、早く食べなさい)
まず、かき回して。お醤油をたらすと。玉子というのは、魂(たま)が入っているという意味だって。(いいから、いいから)子供の頃、生玉子を食べて蕁麻疹がでたように思う。(よくある話だ)
女は度胸だ。そろりと口に入れてみる。あら、食べられるじゃないの。結構いけるね。さっぱりして臭みがない。ほんのり甘い。しかも、いかにもしっかりした生き物から生まれたという感じで堂々としている。人間もかくありたいものだね。(そういうこと。やれやれ)

菅野芳秀さんの自然養鶏のお話「ぼくのニワトリは空を飛ぶ」が、昨年ネット上の毎日新聞に掲載されました。興味のある方は下記にアクセスして、バックナンバーをお読み下さい。

http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/shoku/niwatori/